1-3 魔界

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「お前は話がいちいち回りくどいんだ! 遠回しせずにはっきり言わんか、はっきり」 「でははっきり申し上げましょう。あ な た のせいで多くの人達が迷惑しているから一刻も早く始末をつけてくれ、と申し上げております」  悪魔は天使を睨みつけた。天使は気にせず続ける。 「あちらはかなり本格的に混乱しています。ユニコーンが走り、神馬が飛ぶかと思えば、ドラキュラや魑魅魍魎が徘徊している。そこに当たり前のように人間も生活しているんですからね、なかなか見ものですよ」 天使は書類を小脇に抱えた。 「今回の仕事は基本的には天界の管轄ですが、ぜひ魔界の方にも協力して頂きたい。天界の者には魔界の者を戻したり亀裂の入った魔道を閉じたりはできません」 「わかった、私が行こう」 悪魔は即断した。仕事で出向くなら秘書にもガタガタ言われないで済む。天使は眉を吊り上げた。 「こういう仕事はもっと下っ端の悪魔連中に任せたら如何ですか。あなた様は仮にも魔界の四大実力者、他にやるべき仕事があるでしょう」 「いや、自分の後始末は自分でやらないと」 悪魔は早くも立ち上がって支度を始めている。こういう動きは素早いのである。書類を片付けながらふと気付いて天使に尋ねた。 「ところで天界からは誰が来るんだ?」 「私が参ります」 「は? お前が?」 天使はしれっと答えた。 「仕方ないでしょう。大魔王様の失態を公にしないためにも、他に頼むわけには参りません。しかも結界から流出した神馬というのが私のペガサスなのです」
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