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2-26 エピローグ
学内は長期休暇の真最中で、人影も少なかった。
人間界からジュヌーンに戻ってきて、もう十日になる。ショウは桜並木を急ぎ足で横切り、上級生の寮に入った。両手の荷物がずっしりと重い。螺旋を描いて上に続く階段をうんざり見上げる。
「遅いんだよ」
声をかけられてショウは慌てて振り返った。アスタロトがヨレヨレの黒い魔法衣姿で手を振っている。
「実験はどうなりました」
「順調に進んでる。おかげで予定より早く材料が足りなくなった。だからお前の来る間に、別の魔法定理の準備をしようと思って」
アスタロトは片腕に魔法書と怪しげな液体の入った瓶を抱えていた。ショウは感心するのを通り越してため息をつく。魔法陣、魔法薬、新魔法。多種多様な実験を同時進行でこなすのは立派だが、種類が増えるたびにショウが押し付けられる雑用も増えるのだ。
「これ以上抱えるのは無理じゃないですか」
「まだまだだ。定理を作っただけで実証待ちの新魔法が山のようにある。こんなのお前の研修に付き合わなければとっくに終わってたんだ、ガタガタ言うな。それより必要な物は集めてきたんだろうな」
アスタロトは研修中とはうって変わって、フル回転の活動ぶりだった。
お馴染みのアスタロトの私室に入ると、ショウはたっぷり一分間棒立ちになった。どうすればここまで部屋をグチャグチャにできるのか。昨日確かに美しく片付けたはずなのに、災害後のように混沌としている。
「アスタロトさま……これは」
「気をつけろよ、実験途中の魔法が散らばってるからうっかり魔法陣を踏むとどっかに飛ばされる可能性がある」
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