2-26 エピローグ

2/10

207人が本棚に入れています
本棚に追加
/346ページ
「言いつけ通り高純度魔法水を買ってきました。それと羊皮紙でしたよね」 「チョコレートもだ」  結局ショウは、研修が終わってもアスタロトとつるんでいた。  研修の終わりが縁の切れ目などと画策していたショウだが、そんな思惑などお構いなしに呼び出されるからである。アスタロトは己の魔法技術が見学できて最高だろうと偉そうだが、実情はあまりに雑な生活ぶり故に手出しせずにいられないといったところだ。  しかもアスタロトはショウの作る御飯を心待ちにしている。 「とりあえず片付けましょうか」 「ああ。まず魔法薬の試作を完成させる。ずっと煮込んでるから匂いがすごくて」  アスタロトはボサボサの髪の毛を無造作にまとめた。縛り方がいい加減なのでまとめるそばからほつれていく。 「片付けるのは実験じゃなくて部屋の方です。そろそろ昼時でしょう」 ショウはやんわりとアスタロトに時間を知らせた。 「チョコレートはオヤツです。食事は別にちゃんとしたものを食べないと」 「お前は本当によく食うな。食事時間を忘れることってないのか」 「ないですね。私の食欲が普通なんです、支度しますね」  ショウはさっそくキッチンに立った。  こうしてあれこれとアスタロトの世話を焼いていられるのにはわけがある。ジュヌーンに戻って治癒魔法の追試を受けたところ、あっさり合格してしまったのだ。それで予定していた補習の時間が不要になったのである。  手を焼いていた教授は目をみはる変化に驚いた。ショウが研修中にコツをつかんだことを披露すると、またさらに首を傾げた。教授によれば、アスタロトは悪魔のくせに治癒魔法も特Aクラスの腕の持ち主で、彼くらいの技術があれば、ショウに一か八かの危険な賭けなどさせなくても、じゅうぶん自力で怪我を治せたのではないかというのだ。  アスタロト・セイは妙に自分に執着のないところがあるからな。  教授の呟きに、ショウはうまく答えられなかった。
/346ページ

最初のコメントを投稿しよう!

207人が本棚に入れています
本棚に追加