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アスタロトはショウが治癒魔法が使えるようにするために手を出さなかったのかもしれないし、あるいはあの場でどうなっても良かったのかもしれない。
いずれにしても、アスタロトが管轄外の治癒魔法を習得していたのは、自分自身に使うためではなかったということだ。そう思うと、ショウはますますアスタロトをほったらかしてはいけない心境になる。
そして第二の理由は、追試に成功しただけでなく、研修も合格したからなのだった。それがますますもって不思議でならない。
「よくわからないんですよね。判断の基準ってやつが」
ショウはパスタを茹でながら言った。アスタロトは大嫌いな片付けをしながら適当に相づちを返してくる。
「まだ言ってんのか、しつこいな」
「だって、私は研修中に天使だって正体まであかしてしまったんですよ。さんざん魔法もつかったし。なのに、どうして合格なんでしょう」
「俺が監督してやって、落ちるわけないだろう」
アスタロトは当然のように言い切った。散らばった実験用具をよけて、食事をするスペースを作ろうとしているのだが歩く場所すらない。転びそうになりながら書物を壁に寄せる。
「アスタロトさま、嘘の報告なんてしてませんよね」
「どうして俺がお前のために嘘までつかなきゃならないんだ」
アスタロトはぶ然と答えた。
「うーん⋯⋯それじゃ、誰かの採点と間違ったとか」
「この楽しい貴重な休暇中に、お前以外の誰が研修なんてやるんだよ」
「でも、だったらその採点って、どんな方式なんでしょうね」
ショウは優雅にサラダ菜をちぎった。アスタロトとつるむようになってからますます料理も上達している。
「そういうのは生徒は知らなくていいんだ。採点すんのは教授なんだから。もういいだろ、合格したんだから」
アスタロトは少し怒ったように言った。
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