2-26 エピローグ

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「始めから決まってたんだ、あの時期に伯爵が死ぬのは。そういう人間を研修のターゲットとして選ぶんだから」 「な……」 「研修なんて、モノもよくわかっていない新米の実験台だ。だからいろんな非常事態が発生する。魔法が暴走してしまったり、お前のように姿を見せてしまう者もでる。そんな時に、なるたけ人間界に影響を与えないように、例え失敗しても被害の少ない対象を選ぶようになっているんだ。  寿命が短い、もっとはっきり言えば、研修後短期間で死亡する予定者が選ばれる。そうすれば仮に派手な奇跡を起こしてもそれを言い広めないうちに死ぬし、魔法や説得をしくじって死なせても魂の再生スケジュールにさほど影響しない。伯爵は普通だったら、あのクーデターで死ぬ運命だったんだろう。俺たちが関与して若干期日がずれたんだ」 「馬鹿な⋯⋯」  そんな利己的な理屈を認めたくないと思いながらも、直感的にそれが真実であるとショウは感じていた。アスタロトは言いたくない時にはただ口を閉ざすだけで、嘘はつかないのだ。 「⋯⋯それじゃアスタロトさまは、伯爵が近いうちに死んでしまうって知ってたんですか」 「学生には極秘にしているが、俺はどのセクションもフリーパスだからな。そういうカラクリは嫌でも耳に入る。今回は教授に呼ばれて研修の採点にも立ち会ったし」 「採点方法って、どんな」 アスタロトは浅く息を吸った。 「評価には魂を使う。対象者の魂の純度を調べ、どの程度昇華されたか測定するんだ。だからそのためにもすぐに死ぬ人間じゃなきゃ研修の判定がだせない」
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