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大魔王様が助けたパカという魔性は、最近、村人の人生相談をしているという。
何でも今までは陰ながら村をフォローしてきたが、もうちょっと積極的に存在感を示したいそうだ。
アルパカの姿に驚かない村人の能天気さも相当だが、結局あの魔性は出しゃばりなんじゃないのか。そりゃ人知れず善行を積むより「ありがとう」とストレートに喜ばれるのは嬉しいだろうが。
「つめーたいー素振り~♪だまーされーないよー♪ るーるー♪ きっとォ、君はああぁ~悪魔じゃない~パカ~♪ んーふー♪」
到着すると、パカは鼻歌を歌いながら一心不乱に毛づくろいをしていた。有能な魔物のはずだが、思い切り背後に出現してるのに全く気付かないなんて、たるんでるにも程がある。
「何を歌ってるんです」
私の厳しい声にパカはギョッとして振り返った。
「あっ、ショウ殿!? やだ、聞いてたパカ? この歌、今、めっちゃ流行ってるパカよ。村人とおしゃべりしてたら教えてくれたパカ。ショウ殿こそ、急にどしたのパカ」
「忙しいなら出直しますが」
「大丈夫パカよ。アホ毛のお手入れしてたのパカ。みてみて」
パカは嬉々としてピンクの容器を見せてくれた。
「克己殿がくれたのパカ。ほら、人前に出るとなるとやっぱり身だしなみが大事パカでしょ。このふわふわの毛からぴょこっとはみ出てるアホ毛がずーっと気になってたパカよ」
全身毛だらけのくせに何を言っているかわからない。パカは器用に蹄で毛並みを整えると私の前で座り直した。
「それで何のご用事パカ?」
「まず先払いの相談料を」
ドン、と銘酒魔界酒を置く。魔性の目が輝いた。パカパカ可愛い素振りだが、この魔物は大変な酒飲みなのだ。私は酒瓶を撫でさするパカにぐいと近づいた。
「大魔王様が……大魔王様が克己の料理を美味いと言うんです」
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