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屈辱にまみれながら言ったのに、パカは微笑みながら首をかしげた。
「美味しくご飯を食べるのは良い事パカ?」
「ええ、まあそうですよ! この村の場合、素材は採れたてだし、近所の料理上手な御老人がやたらお惣菜を差し入れしてくるから品質は悪くない。それは私も認めます。
でも今日にいたっては冷ややっこですよ!?
知ってます? 冷ややっこ。豆腐を切って醤油をかけただけ! しかも生姜もなければアサツキもなし。なのに大魔王様ときたら『うまいなー、こんな美味いもん初めて食ったかも』って、その出しただけの豆腐を大絶賛したんです。何なんですかこれ、あの人ほんとは味わかってないんじゃないですかね?」
「とっ……豆腐は絹パカ木綿パカ?」
私の迫力に怯んだのか、パカがとんちんかんな返事をする。そのパカを私はぎりっと見返した。
「私はこれまで細心の注意を払って大魔王さまの食事を提供し続けてきました。あの人が和食が好きだというから、出汁のとり方から素材の切り方、煮物揚げ物まで独学で学び、熱いものは熱々で、冷たいものはきっちり冷やしてそれはそれは気を配ってお出ししてきたのに、冷蔵庫からスコーン!と出した豆腐に負けるなんて!はッ」
言いながら興奮して一気にまくしたてた。パカは沈黙している。返事のしようがないんだろう。普段冷静な私がこうもギャンギャン騒いでいたら対応に困るのも無理はない。
いつまでも愚痴っていても仕方ないので、私は思い切ってパカに尋ねた。
「パカ殿、私は何でこんなに腹立たしいんでしょう」
「パ?」
「大魔王様が克己の料理に美味いを連発するたびにイラっとするんです。こんなちっっさな事でみっともない、上級天使ともあろうものが!」
「それは嫉妬パカ。愛情の裏返しパカよ」
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