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……ああ、御礼状を書かなくては。
頭痛の響く頭を押さえ、彼女は公爵家専用の便箋を取り出す。地位が地位であるから天界からも高価な品々が届いているし、魔界の実力者からもこぞって相応な贈り物が届いていた。しかもあろうことかサタン様からのメッセージまで届いているのだ。
……まずサタン様と天界のみなさま、それからベールさま、ベールゼブブさま、ルシフェルさま……
ここら辺は早急に挨拶と返礼をとらねばならないところである。
……贈り物の数をチェックしてリストを作り、急いでお返しの品を発注しなくては……
くらくらする労働量だった。その作業の面倒なことを思えば気も遠くなろうというものだ。
そんな訳で、ルクルは今、アスタロトへの腹立ちを抑えながら謝礼の手紙の文面を考えている。迂闊な事を書いて余計な事を勘繰られても困るため、つい一言一句に慎重になる。思うようにはかどらず、何枚も何枚も便箋を破っては捨てている状態だ。ルクルはまたしても大きなため息をついた。
進まないものは仕方ない。いっそ気分転換に昼食にしようか。そう思って席を立ったときだった。
__________ルルルルルル。
通信機のシグナルが点灯する。コールナンバーを見ると天界からだ。
きっとあの天使だわ。
ルクルはすぐにピンときた。六大天使の側近で良く気が付く美しい上級天使がいたのである。ずっと昔、研修時代にアスタロトがまだアスタロト大魔王でなかった時代に、ペアを組んだことがあると聞いた。若い中では一番の出世頭で整った容貌は冷たい雰囲気を持っている。
この天使、会談の始まりから終わりまで実にさりげなく、そしてこのルクル以外は到底気付かないぐらい何気なくアスタロトを見ているのである。
ルクルはその視線の意味に興味がわいたが、無表情なうえにすぐ目線を外すのでわからずじまいだった。しかし会談三日目、病欠の発表をした時に食い入るように聞いていたのもこの天使だし、さりげなく大天使に直接の見舞いをすすめていたのも彼だった。
会談が終わった翌日、さっそく通信機でアクセスをとってきてルクルが面会謝絶というとすんなり引き下がったが、こうして連日同じ時間にコールしてくる。
間違いない。この時間はあの天使だ。でもちょっとしつこくない?
ルクルは少し構えて通信機のスイッチを受信に切り替えた。フッと空気が揺らいで立体感のある映像が目の前に出現する。
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