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「こういうことは、ルシフェルの方がお得意でしょう」
指名されたルシフェルは自信ありげに微笑んだ。彼は魔界と天界とをつなぐ外交官的役割を担っており、通信の統制もしている。
ちなみにこの天界・魔界の六大天使、および四大実力者の要職は名前で表現されており、魔界の西方を治めればアスタロトを、天界最高司令官のポストにつけばミカエルと呼ばれることになる。
ルシフェルは目を閉じて、もう一度お茶の香りを嗅いだ。
「ラファエルの言う通りダージリンとウバ茶がメインですが、隠し味に1割程度のアッサムを加えていますね。インドのヒマラヤ産でしょうか」
「はは、さすがに各地をとびまわるルシフェル、ずばり見抜かれました」
活気のある笑い声が響く。
今回のお茶会はフィンガーサンドウィッチやジャムつきのスコーン、パイやクッキーなどの焼き菓子が幾つもの銀のトレイに盛り付けされ、いつにも増して豪華だった。天地会談の後の初のお茶会は、人間界のアフタヌーンティーを楽しむ趣向である。
ミカエルはひととおり皆の談笑が落ち着くのを待って口火をきった。
「ときに、天地会談の感想を聞こうか」
ミカエルの目配せでラファエルが話をはじめた。
「進行は順調でした。全て打合せ通り、問題はなかったと思います」
「天地会談は当日より前段階の準備過程にこそ意味があるからな。当日などわかりきった事を進めていくだけだ」
天界側でも、この重要会議は決定事項承認のために機能していると認識されているらしい。
ミカエルは焦れたように身を乗り出した。
「そんな事より私が聞きたいのはプライベートの方だよ、ラファエル。久しぶりの人間界をいかに堪能したのか暴露し合おうじゃないか。身内のティーパーティーなんだから焦らさず答えて欲しいものだ」
「ミカエルこそ先に話を聞かせてくれ。ルシフェルに案内をたのんでグルメ旅行をしていたとか。どんな珍味に出会ったんだい」
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