3-2 天界

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「私などは地味にやっていた方さ。ガブリエルなど海底で人間界の神仙とどんちゃんさわぎしたそうじゃないか」 「おや、お耳がはやいですな。彼等とは旧知の仲で」  おかげで海中から謎の光が漏れ、人間界では怪現象だと話題になったのだが、ガブリエルはどこふく風である。 「セラフィムとウリエルはどこに?」  ウリエルは学者らしく、各国の国立図書館をはしごしていたと言った。とことん研究肌である。  一方のセラフィムは、業務を離れて気楽な奇跡を起こしては人間の反応を見て遊んでいた。虹を出したり、すれ違う恋人を引き合わせたりしてその喜び様を楽しむ。さらにその後人間界で美談として話題になるのも二度美味しい。 「さあ、ルシフェル、君の番だよ」 「私は分離せず、天地会談の会場におりました。六大天使がみな人間界で遊び回ってると知れたら一大事ですので、万一のフォローのためにね」  真面目なルシフェルにミカエルは大袈裟に首を横に振った。 「おいおい、私達が人間界に行けるのはこの時をおいてないんだぞ。あとは公務で忙殺されているし、お忍びといっても世間の目が鋭い。せっかく一年に一度の機会なのに」 「いいんですよ。私は補佐という立場上、みなさんより自由がききます。たまには会談にフル参加してみるのも一興かと」  ルシフェルは微笑した。  つまり、である。六大天使も魔界の四大実力者と同じように天地会談をサボっているのである。  ただ、天使は偽物と入れ替わるのではなく分離して二人になる。戻るときはまた融合して一つになるのだが、分離中は力も半減するため、会議に対してかなり気を抜いている事がわかる。  ただ、片方の自分が遊び呆けているとはいえ、もう片方は会場に残ることになるので完全にさぼっている訳ではない、というのが彼等の言い分だ。 「大義だったな、ラファェル」 「いえ、魔界の実力者様方はみなさま当然なさっている事ですから」 お互いに知らぬが仏である。
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