3-3 紫玉

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 一方、魔界では天界からの交渉を発端に魔物たちに内紛が生じ、一代目ルシフェルはその渦中に巻き込まれていた。そして長い戦いの末、最終的に勝ち残った実力者4名の中の1人になった。    4人は全く互角の力を持ち、戦えば魔界の存続に影響を与えるほどの破壊力を有すると思われた。ならばどうせ魔界は広いのだし、テリトリーを分けて4つの地方政治をしようという発想に落ち着いた。    ちなみこの異世界には神として崇められ、特別な権威に守られた存在がいる。  サタンと呼ばれ、絶大な力を持ちながらめったに表に姿を現すことはない。普段は小惑星から魔界を静観しているが、最終的にはこのサタンの一声により魔界が三界の一端を担うことが決定したとされる。  魂の浄化作業に関しては、一定のエネルギーを魔界にも供給することで合意した。魔界ではむしろ負のエネルギーに利用価値があったが、人間を転生させないと次のエネルギーを搾取できないため、このサイクルに加担することに異論はなかった。  ルシフェルは、野放図だった魔界に政治の概念をもちこみ、浄化システムの立ち上げや作業分担など、精力的に働いた。  そこまで魔界創設に深く関った人物の名を外す訳にはいかず、天界出身ではあったが魔界の四大実力者の1人としてルシフェルの名前が刻まれた。  かくして初代ルシフェルは、その多彩な功績により、天界に1つ、魔界に1つ名を残すことになった。前半生を天界で、後半生を魔界ですごした彼らしい結果である。もっとも今では初代ルシフェルはとうに鬼籍の人であり、天界は五代目、魔界は四代目が勤めている。  さて。  そんな訳で、異なる次元に天界・人間界・魔界の三界が存在する。  始めこそ、その境目は曖昧だったが、それぞれの次元が完全に固定され、長い年月が経過すると、各次元の空間の性質がより強化された。そして各界の住人達はその環境に速やかに順応したのである。  この次元の違いは、生存条件に等しい。  天使・悪魔・人間の三者は、適応したが故に、自分たちの住む次元以外は住むことのできない体になってしまったのだ。
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