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「甘い! カラメルソースが多すぎる。それにプリンはもう少し固めで卵の風味を感じるタイプの方が」
克己からプリンを奪っておきながら、ショウはしゃあしゃあと不平を言った。
「嫌なら返せよ」
「甘いが美味い」
「美味いなら、美味そうに食えよっ」
「それとこれとは別だ。ええい、腹のたつ」
ショウはプリンを搔っ込んだ。その苛立ちの意味がわからない克己は、ポーっと失われたプリンに想いをはせている。
ショウは最後まで食べ終えると、カッと上空を睨みつけたまま言った。
「……克已」
「はあ」
押し殺した低い声に克己はおされ気味である。ショウは暗い顔で続ける。
「はあじゃないだろう、はあじゃ。こっちは一大決心をしているんだ、それに匹敵する意気込みで返事をしてくれなきゃ困るじゃないか。いいか、」
「あ、はい」
「私は不本意だ。よりによってこの私が人間なんかに頭を下げて頼み事をするだなんて、自分で自分のプライドを踏みつけにしている気がする」
「はいはい」
「はいは一度でいい。安易に繰り返すと軽薄になる」
するどいチェックがはいる。
「しかし事が事だけにやむを得ない。よし、克己。言うぞ」
「なんでもいいけど、もうプリンはないぞー」
克己はヘラヘラと笑っている。(普通に微笑んだだけだがショウにはそう見えるのだ)ショウは、ああ、とため息をつき、頭をふって、悔しさを紛らわせようとした。
プリンなんかどうだっていいんだ。こんなつまんないボケをかましてくる克己に、この私が頭を下げねばならぬとは! なんたる非運! なんたる屈辱! なんたる不覚っ!
しかしショウは覚悟を決め、手を前に揃えるとひれ伏した。そして、頭を下げたまま一息に言ったのだ。
「頼む。大魔王様をお引き止めして下さい。克己から紫玉などとりにいかないよう説得して欲しい。お願いします」
克己は、あぜんとして目を見開いた。だが、ショウの様子でようやく只ならぬ状況が伝わったのか、ごくりと唾を飲み込んだ。
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