3-4 芳賀屋

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「私はいつもはぐらかされてしまう。今までもそうだった。でも克己ならできる。あの方はあなたには甘いから、あなたが必死に縋れば決心がぐらつくかもしれない」 ショウの言葉は整然としていたが痛々しかった。 「ショウ」  克己はショウから手をはなした。思いきり力をいれた指はこわばっていて、手を離した瞬間、一気に血が通って熱くなった。 「教えてよ。何で太郎って俺に甘いの? 友達ってだけ? 俺はそう思ってたけどそれだけじゃないの?」 「シュウ様ですよ」 「誰それ」 「……いや、聞かなかった事にして下さい」 ショウは目線を落とした。 「大魔王様はずっとあなたと会えるのを待っていた。私はそう思う。でもこれはまだ憶測の域をでないし、理由も私から話すことではない。それより今は一刻を争う。後でゆっくり大魔王様に聞いて下さい」  克己は全然納得していなかったが、追及する時間もなかった。ショウはさらに克己に念を押した。 「協力してくれますよね」 「言われなくたってやるよ。でも、どうすれば太郎と話ができるわけ?」 「簡単です。あなたは願うだけですよ」  ショウは自嘲気味に笑った。 「私が少し力を貸して、克己の声が届きやすいようにします。お気に入りのあなたが必死に呼びかければ大魔王様はとんでくるでしょう。  そもそも克己は大魔王様と契約がある。まだ三つのうち最後の願いを叶えていないから契約は有効です。悪魔は願いをたてに呼びつければ、でてこないわけにいかないんです」 「よし。俺にまかせろ。大船にのったつもりでなっ」 克己はドン!と拳で胸を叩いた。しかし勢いが強かったのか、痛ぇと呟いて、シャツに頭をつっこみ赤くなったところを覗いている。  ……泥船にのってしまった気分だ。  ショウは不安をかくせず深いため息をついた。
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