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「なんだこの祭りのような盛り上がりは。予想はしていたが、まさかこんなに消滅を期待されているとは」
もはや呆れて、アスタロトはあちこちでつつきあう魔族の様子を傍観していた。
「どいつもこいつも何なんだ。私の前では永遠の忠誠を誓っていたくせに、裏ではさんざんじゃないか。顔ばっかりの能なしだとか、あのお飾りは馬鹿の花だとか悪口三昧だ。ひどいのにいたっては、虫も殺さぬ顔でサタン様にとりいっただの……ったく、一体この私がいつサタン様に色仕掛けしたっていうんだ。証拠があるなら言ってみろ、いつどこでどんな風にって!」
「悪趣味です」
だらだら文句を言っているアスタロトに、秘書のルクル嬢はぴしゃりと言ってのけた。
「あんな雑魚連中など放っておけばいいじゃないですか。何人あつまっても小物は小物、たかが知れてます。そもそもこれだけ方々から罵られるのは、普段からアスタロト様のふるまいが自由過ぎるからです」
「自由? 思ったままを口にしてるだけだぞ」
「そこです! 普通、上に立つ方は表現を配慮されます。いいじゃないですか。彼らもアスタロト様と同様、思ったまま行動しているにすぎません。『四大魔王アスタロト大公爵』はそれだけ羨望のポジションだという事です」
ルクルは落ち着いた口調でアスタロトの気を静める。アスタロトは頬杖をつ
いたまま、画面を指さした。
「君の父君はさすがに忠臣と誉れが高いだけあって静観している」
しかしルクルは途端に顔をひきつらせた。
「父は今、新婚ですので世間の噂など耳に入らないんですわ」
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