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1-6 お仕事
「今日の仕事の概要を説明します」
真面目くさった顔で天使が切り出した。
「まずは魔物を封印し、ほころびた結界を修復すること。二つ、天界のものを天界に返し、以下同様。こちらは私が担当します。
気付かれると逃げられる可能性が高くなりますので行動は迅速に、今日一日で全ての作業を完了させる予定です。克己は今まで集めた苦情メモをもとに村人の対応をすること、そして効率的に二人を現場に案内する。いいですね」
言うのは簡単だが、実際に事を行うのは大変である。克己はさっそく関係者各位に電話をしまくった。
「はあ、そーです。太郎の、そーそー、そーです。俺の従兄弟の芳賀太郎。その大学での友人にですね、宗教を学んでいるソノ道の人がいるとかで……大丈夫、学生でも修行済みでお祓いが大得意って言ってます!
はいはいはい。そーです、なので大声を出したり道具を振り回したりしますけど気にしないで下さい。それとお祓い中は集中しなきゃならないんで、近づかないで欲しいみたいです。色々すみません、それじゃ祓ってきますね。敷地にお邪魔しますが入って大丈夫? どうも、ではがんばってきます。失礼しましたー!」
一応どの場所にも所有権がある以上、勝手に足を踏み入れて祈祷まがいの事はできない。しかも結界を貼るとか魔法を使うとか、目撃されたら騒ぎになりそうな行為ばかりである。克己はこれ以上面倒な事にならないよう必死で話をつけた。
件数が多いので手間だったが、どの家もあっさり承知してくれた。どちらにせよ怪現象に解決策はなかったし、村の住民はのんびり者ばかりなので態度もゆるい。
「さーて、全部許可は得た! これでよしっと」
通話を終えた克己は、悪魔と天使の前で手書きの地図を広げた。
「よくでるって言われてるのは、大体十ヵ所だよ」
十ヵ所といっても、狭い村でこれだけの数があると、あちこちに出没といった賑わいぶりである。
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