3-6 説得

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 魔天大道の入り口に差し掛かると、休みなくとんでいたアスタロトが突然止まった。 「おーい! かくれんぼはここまでだ」 呼びかけたが返事がないのでアスタロトはさらに声をはりあげた。 「ショウ! でてこい。早くしないと魔法を使ってひきずり出すぞ」 アスタロトは腕をくみ、虚空をにらみすえた。すると、じわじわと白の片輪が闇に溶けはじめ、見覚えのある天使の姿があらわれた。 「穏やかじゃありませんね、大魔王様」 「俺は姿を消して監視するような姑息な真似は嫌いなんだ」 ショウはあくまで無表情をつらぬくつもりらしかった。真白な翼をとじて、ひっそりと立っている。アスタロトは苛立ちをおさえきれず声を荒げた。 「克己に何を言ったか知らないが、あれではやりすぎだ。俺をタルタロスに行かせたくないのなら自分で言え。克己をなだめるのに一苦労だったんだぞ」 「本当の事を教えただけですよ」 「本当の事だとしてもわざわざ克己を不安がらせる必要はない。ちがうか」 ショウとアスタロトの視線がぶつかった。 「大魔王様はずい分自信がおありのようですが、事が紫玉となれば木になってるリンゴをとってくるような訳にはいきませんよ。適当に克己をいいくるめて勝手に死んだりしたら、恨まれるのはあなた様です。もう少し現実的に事態を把握すべきではないですか」 「把握? してるとも」 アスタロトは頭の前で手を振った。 「タルタロスの資料は全部揃ってる。今まで紫玉に挑戦した者のデータ、結果、敗因。アトランダムといわれる次元変化の確率、森の詳細地図から紫玉までの最短移動ルート。紫玉を封印している九十九の呪文と解除の手順。これさえあれば、他の魔王連中だって手をだそうとするだろう。世間が何といおうと、俺としては確率は五分五分とふむね」 「それにしたって半分じゃないですか!」 ショウは鋭く言った。
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