3-6 説得

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アスタロトは肩すかしなぐらい気楽に言う。 「結果がわかりきってる勝負なんかつまらないだろ。半々ぐらいが調度いいじゃないか」  天使は、ぎりっと歯をくいしばった。  いつもこうだ。この人いつだってどんな苦境でも絶対に寄りかかろうとしない。何でもなさ気な顔をして、軽口をたたいて横をすりぬけていってしまう。  だからいつまで経っても、いくら成長しても追いついた気がしない。一言で言うなら永遠に勝てそうもない相手だ。勝っても不安が残る人だ。  半歩前を歩いて、懸命さをかくそうとする私を見すかしている。  今回だってそうだ。また、今度もだ。 「そうやって……」 天使は唇をかんだ。堪えきれなかった。 「そうやって、あなたは置いていくんですね。いつまでも追いつかれないよう先に先に」 アスタロトはフッと微笑んだ。 「そんなこと思ってたのか。馬鹿だな。お前だってめざましい出世ぶりじゃないか。昔、一緒に組んでいた頃とは大違いだ。実力だけでなく、器用なお前はまわりに充分受け入れられてる」 アスタロトは一拍間をおいて、独白するように続けた。 「でも、ま、あたってる部分もあるにはある」 ポツリという。何かを観念したような、穏やかな顔つきだったが、目が真剣だった。 「俺は置いていかれるのは嫌だよ。とり残されるのは嫌だ。置いていていかれる辛さより、先をいく大変さを味わった方がいい」 ショウはその言葉に胸騒ぎがした。こんな言葉を今までアスタロトは言った事がない。 「大魔王様! 約束して下さい。どうか紫玉をとりそこねてもタルタロスから逃げだすことになっても、絶対生きて戻るって」 「お断わりだな」 アスタロトはきっぱりと言った。
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