3-8 ジュヌーン

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 魔界は油断ならない世界だ。だからアスタロトはうかうかと遊んでいるようで、魔界の重要人物や主要な場所には透視魔法をかけて監視を怠らない。天界では考えられないが、魔界ではどの魔王も各自の透視魔法を駆使して見張りあうのが常らしい。  慣れない操作をしながら、ショウはひとりごちた。  あれは虫のしらせだったのかもしれない。  ……ともかくここは己の機転を心から褒め称えたい。  それは天地会談直後のこと。アスタロトに連絡を取った日に遡る。  あの時、ルクルに繋いでもらえなかったショウは魔法塔に直接アクセスした。その時、この別荘の鏡に通じる透視魔法を、ちゃっかり魔法塔にも繋げておいたのだ。  実際は虫の知らせなどではなく、これから先もあの頑固な秘書にいちいち取り次ぎを頼むのが心底嫌だったからである。  土台があるとはいえ、異次元の透視魔法をかけるのは高難度の技だ。  ショウも魔法技術は高いが、あの時、アスタロトがショウを実体に近づけていなければ不可能だった。そこは幸運である。 「それにしても無茶をする」  魔天大道でアスタロトを止められなかったショウは、思いつくかぎりの行動にでようとした。  魔界へ行けない以上、実際に手を貸すのは至難の技である。だがせめてアスタロトの戦いぶりや状況がわかれば、できることもあるかもしれない。  そう考えてこの別荘に籠った。魔界の映像を見る事ができるのは、アスタロトが設置した鏡をおいて他にないからだ。  ショウはさっそく画像を逐一チェックし、タルタロスの映像が映っていないか探した。  だが、そもそもタルタロスは壁に阻まれた危険区域であり、内部に透視魔法かけられるはずもない。それでもアスタロトが偵察がてら近場に魔法をかけていないか期待したが、見つけることはできなかった。  
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