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アトランダムといわれる紫玉の変化。
だが、紫玉の活動確率を地道に分析すると、その変化にはある程度、特徴がある。
紫玉は魔力に対して鋭敏だった。とくに地表を使う魔法は魔力が砂を媒介して伝わりやすく、大きく影響を及ぼす。
アスタロトを消滅させようとしてタルタロスに潜んでいた魔王達は、そんなことなど知りもしなかったに違いない。単純に地中に潜んだ方が見つかりにくいと思ったまでの事である。
しかし彼らは砂を使い、激しく暴れた。
アスタロトも阻止するためやむなく地中に火竜を放った。禁足地であるタルタロスでこれだけの魔法が使われれば、紫玉を刺激するには十分だったはずだ。
紫玉はいったん目覚めるとその後数時間にわたってめまぐるしく次元を変化させる。その間タルタロスの空間は大混乱に陥る。
紫玉が静まれば封印塔の力で森は魔界の次元に戻るが、それでも場所によって余波は残る。
アスタロトにしてみれば封印を解く寸前まで、紫玉には眠っていて欲しかった。
しかし消滅した魔王たちの怨念のせいか紫玉は目覚めてしまった。
しかも最悪なことに天界へと次元を変化させたのである。
さて一方。
大慌てで克己との通信を切ったショウは、そのまま直ちにアスタロト公爵家にコールしていた。遠慮なく緊急通信で怒鳴り込みである。
仕事に精をだしていた秘書嬢ルクルは、非常事態を告げるコール音にすっとんできた。
「はいはい! このクソ忙しい時にどこのどいつが何の用?!」
相手方のコールナンバーが天界のもの、しかも例の口うるさいショウのものとわかって、ルクルはげんなりする。
またアイツか!
どうしていつもここぞって時に出しゃばってくるのよ!
内心、激しく悪態をつきながら書類の束を脇にずらす。あの天使は煩いだけあってやたら目ざとい。ルクルは資料の山を隠すように通信機の前に立ち、受信スイッチを押した。その瞬間こめかみに浮いていた青筋が消え、鮮やかに微笑む変貌ぶりはなかなか見ものである。
「アスタロト大公爵家でございます」
「秘書殿ッ!!!!!」
声でかッ!!
ルクルは思わず体をそらした。受信した途端、ショウが画面ぎりぎりまで顔をつきだして怒鳴っている。しかもいきなり「大魔王様がタルタロスにいるのはわかっています」と核心をついてきた。
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