3-9 戦い

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ショウは一向に進まない会話に怒りを爆発させた。 「そうですよっ、もうわかったでしょう、いい加減に本題に入らせてくれ」 「だから何が本題なのよ、こっちだっていきなり聞かれてベラベラしゃべるわけないでしょ!」 とはいえルクルも迷いはじめていた。ショウの言葉が本当か嘘か、決定的な証拠は何もない。しかしその気迫は並大抵ではなかった。 「ああ、もうっ、うざったい女だな! こうしている間にもあの方が危うくなるとわからんのか」 ショウはついにキレて、画面にむかって吠えた。 「大至急、大魔王様にタルタロスから引き返すようお伝え願いたい」 「なんですって?」 「おそらくアスタロトさまは御存じない。出席していないんだから」 「だから何を」 「天地会談の最終日だ。秘書殿が代理人を務めたのは日中の意見交換会だけだから知らないのも無理はないが、会談後の食事会は他の予定と違ってめずらしく台詞の決まってない自由な場なんだ。  スケジュールもほぼ終わり、皆様方はフリートークに花が咲いておられた。その時、ウリエル様のおとりまきの一人がタルタロスの話題を出したんだ。  その方はとりわけ綿密な調査をする神学園の優秀な学者で、専攻は空間次元学になる。そのため、次元変化をする紫玉に興味津々で、かねてから独自に調査をしておられた」 「それが一体」 「紫玉も封印してから数千年、封印しているとはいえ長年にわたって紫玉を抱えていたタルタロスは少なからずその影響を受けているらしい。  森は通常時、魔界の空間と言われているが、その通説には疑問を感じるというのが彼の意見だ。  実験室でタルタロスの模型もつくってみたらしいが、激しい空間変化に耐えてきた森は、もはや平常時でも空間に歪みを抱えている。  その歪みは魔法の効力、とくに空間魔法の類いに悪影響を及ぼす。  もちろんこれは仮説でまだ発表段階ではないが、彼の実績や頭脳を考えると、はずれているとは思えない」 ルクルはハッとした。
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