3-9 戦い

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「アスタロト様が紫玉を狙うと噂を流せば、予想されるのは失敗か死でしょう。となれば、次代のアスタロトめがけて魔王が動き出すはず。  読み通り早速、タルタロスでアスタロト様を殺めようとする動きがでたわ。  あの森は分厚い塀に囲まれて真実は闇の中、何があっても紫玉のせいにできるでしょう? でもそれはこちらも同じこと、アスタロト様は彼らが森に入ったら返り討ちにするつもりだった。そして私はリストをつくる」 ルクルは分厚い資料の束を掴んだ。 「リスト?」 「そう。魔法塔の大きなスクリーンは御存知でしょ。  あれには魔界中の様子が見られるように透視魔法がかけてあるけど、タルタロスに関してはアスタロト様の見たものを記録しているの。たとえ逃げられてもその場にいれば反逆の証拠になるからね。とにかく魔王たちは姑息だから、タルタロスに来たのが実体とは限らないのよ。念のため偽物を送り込んでる場合も十分あるし、実際何人かはダミーだったし」  だからあの画像だったのか。ショウはタルタロスの様子が好都合に映し出されていた事に合点がいく。 「私は紫玉騒動の間、全ての魔王の反応を監視するよう言われているわ。  彼らがこの騒動でどんな行動をとったか観察することで、敵か味方か判断する材料になるわけ。アスタロト様は信頼できる魔王を空いたポストに据えて、身辺をかためるおつもりよ」 アスタロトの真意に唸りつつ、ショウは尋ねた。 「でも、それだけなら別に本当に紫玉をとらずとも……邪魔者を一掃したら戻ればいいじゃないですか」 「さっき言ったと思うけど、アスタロト様こそ全くもって実力主義者なの。だから実際に紫玉をとる程度の魔力がなきゃ大魔王にふさわしくないって自分が一番思ってるわけ。私ならこんな成功率が微妙な賭けは御免だけど、あの方は負けず嫌いだから一度決心したらひるがえりっこないわ」 ルクルの言い方はすっかり素に戻って、気性通り激しかった。 「ま、そんな訳で撤退なんて無理無理。私は指示通りリストを作るだけよ。あの人も大魔王ならなんとか御自身で切りぬけるでしょ」 じゃあね、と言って、ルクルは手を振った。ショウは慌てて遮った。 「待て、万一通信方法がみつかったら協力願えるか」 「やってもいいわよ。雇主に死なれたら困りますから」 「よし、話は決まった。では君はせいぜいリストでもつくりたまえ」 「ええ、あなたもせいぜい頑張るといいわ。ごきげんよう」  ソリのあわない二人はツンケンしながら通信を終えた。  とにかく残り6時間である。
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