3-9 戦い

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 激しい揺れにアスタロトはすぐさま膝を立ててその場にしゃがんだ。  地鳴りがして、振り落とされるような縦揺れが襲う。アスタロトは砂に爪をたて、必死に踏ん張っていた。砂から目をそらさない。 「そろそろか」  じわ、っと白く乾いた砂に黒い染みが広がった。  地下から水がしみだしている。水流はあっという間に一本の流れをつくった。細かいギザギザを描きながら封印塔まで続く水の線である。  アスタロトは地面に魔法文字を描いた。砂に描かれた踊るような文字は、その指が離れた瞬間、焼印を押しつけたように煙を吐いた。  ピシッ。ミシミシッ。  魔法文字から先、封印塔までの地面に、一気に亀裂がはしった。  違う。アスタロトは唇を噛んだ。  この魔法なら、本来、人一人が通れるくらいのもっと深い溝が出来るはずなのだ。なのにさらに念じても申し訳程度にしか地面が開かない。魔力が弱っているのか、魔法が効きにくいのか。地下を走りぬけようとしたが、こんなささやかな溝ではとても無理だ。  くそ、それならいい。これでどうした。  アスタロトは気をとり直して息を整えた。とりあえずこの眩しさを凌げればいい。地下にこだわる必要はない。 「水よ、私の声が聞こえるなら地上に出でよ」  すっと、人さし指を地上に浮かせると、わずかな亀裂のすきまから、勢いよく水が噴き出した。  水は数十メートルにもなろうかという高さになり光を反射した。  アスタロトは浮かせた人さし指で、そのまま空に円を描く。水はその仕草通り、くるりと折れ曲がって水のトンネルが出来た。 「よし」  言いながらだらだら垂れる汗を拭った。すでに全身ぐっしょりである。  アスタロトは水のトンネルに入った。中はヒンヤリして、それだけでも一心地ついた。空間は相変わらずの厳しさだが、光は水という名のクッションを経ると相当威力が弱まる。  水の流れに足をのせると、そのまま一直線に運ばれた。  みるみる封印塔が近づいてくる。  時間は残り5時間半程度。
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