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3-10 挑戦
でかいな。
封印塔を前にアスタロトは絶句した。そびえる塔を見上げる。
文献から大きさは知っていたが、どう見ても思っていたのと単位が違うサイズだ。
侵入してみて初めて認識したが、タルタロスの内部は想像以上に紫玉による影響が刻まれていた。
勿論、禁足地とはいえ、紫玉獲得を決めてから調べられる限りのことはした。だがその影響は想定をはるかに超えていた。
砂や空間、魔力に至るまでタルタロスには独特の歪みが発生している。
封印塔に辿り着くまでにもその誤算にはさんざん苦しめられたが、まさか塔そのものが巨大化していたとは思いもしなかった。とはいえ紫玉を内側に抑え込む塔が、最も影響を受けるのは当然かもしれない。
とはいえこんなに大きくなるなんて。
アスタロトはうんざりと封印塔を見上げる。
紫玉自体は手の中に入るくらいの玉だ。だがそれを封印するためだけに立っている塔はちょっとしたビルほどの大きさがある。どうりで遠くから見た時に遠近感がおかしい気がしたはずだ。
封印塔は、銀の長い筒を呪文とともに1本づつ組んで紫玉を囲っている。完成した形は六角柱の建造物で、呪文の力と円筒の自重で強固に組み上げられていた。
紫玉の封印をとくということは、すなわちこの封印塔を壊すことだ。
封印塔の頑強さは他に類をみない。攻撃魔法では傷一つつかないし、どんなに力を加えても円筒を動かすことは不可能だ。
封印塔を破壊するには絶対の手順がある。
まずは解除の呪文である。それを唱えながら、組み上げたのと正反対の順番で一本一本円筒を外していくしか方法はない。
だがその一本があり得ないほどに重い。アスタロトは両手がまわらない程太い銀の筒を地道に外していくしかないのである。99回にわたって。
しかも、とりはずす筒の順番や呪文を間違えると、封印塔は一定時間にわたっていかなる解除の呪文も受け付けなくなる。失敗は許されない。
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