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……しかし、でかいなー。
正直言って、この大きさはかなりのダメージだった。
これだけ大きいと自力で持つのは無理だから、魔法で動かさなくてはならない。しかしすでにアスタロトの魔力は半減している。ショウが連絡を取るまでもなく自分の力が弱っていることは肌で痛感していた。
そんな状態で難解な解除の呪文を唱えながら、円筒を魔力で浮かして移動させるのだ。しかも余計な刺激を与えないよう、外した筒は慎重にそっと砂に横たわらせる。考えただけでも疲れる。
事態はここにきて魔力戦というより体力戦という趣きになってきていた。
いよいよもってこれはまずい展開である。
アスタロトは魔力高・体力低型の魔法使いの典型で、過去の戦いでも常に強い魔力で体力のなさを補ってきた。
水のトンネルのおかげで封印塔までは辿りついたが、ここに来るまでに敵を倒したり、空間が天界に変化したりで、アクシデントが続いている。はじめは体力配分を考える余裕もあったが、途中からは全力でもキチキチの状態だった。実際、この時点で保護魔法の限界は残り4時間に迫ろうとしている。
とにかくやるしかない。
アスタロトは心を決めて封印塔から数歩、後じさった。
ずりずりと砂に足あとが残る。封印塔を上から下までなめるように見つめる。無機的な銀の筒が冷酷に地上を見下ろしていて、月の光すら鈍く弾き返す。
その姿は、一切の侵略も許さないと言っているようだった。
「Grifola frondosa」
アスタロトは封印の解除魔法を開始した。
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