1-6 お仕事

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「ka ksik duikislloo kekjifuusi kfiufisiio……」  異国の歌のような耳慣れない響き。悪魔は独特の韻を踏みながら言葉を紡いでいった。淀みなく続く呪文。悪魔の顔色はいつにも増して白くなって、額には血管が浮き上がってきた。  突然、沼の色が変わった。  泡立った水面から潜んでいた魔物が吐き出されていく。そのたびに派手な水しぶきがあがった。悪魔が両手の掌を空に向けると、その体は白い炎に包まれたように光った。 「kejokll kooopdejl keoopji」  上空で光がきらめき、沼に雷が落ちた。威嚇を続けていた魔物達が急激に力を失って崩れ落ちる。  喉を締めつけるような悲鳴が聞こえていたが、やがてそれも消えた。悪魔は地に膝をつき、一気に魔法文字を書いた。 「大魔王アスタロトの名において封印する。閉じよ!」 凛とした悪魔の宣言が響き渡った。  右手を地面につけると、パァン!という爆音とともに土が弾けた。細かい砂が四方に飛び散り克己の頬をかすめる。  悪魔はジーンズのポケットから銀の輪を取り出し一回転させた。輪は直径一メートルぐらいの円に変化し、地面に投げるとものの数秒で土と同化した。  同時に沼の色が元の明るさを取り戻した。悪魔が息を吐く。 「よし、これで結界の修復完了。もう動いていいぞ」 「相変わらず、見事なお手並み」 背後に控えていた天使が拍手した。だが、その目は意地悪く光っている。 「久しぶりに見せて頂きました。さすが大魔王様、格が違う。希代の魔法使いの名にふさわしい」 悪魔はギクリとし、克己はきょとんとした。未だに克己は彼を落ちこぼれと信じて疑わない。
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