3-10 挑戦

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「Mkuchne romyc es 」  1本目と同じ要領で、じっと目を凝らしてその部分を見つめる。今度は底だから浮かさずに転がせばいい。それだけでも大分楽だ。  円筒は大儀そうにゴロリと外れた。そして封印塔から離れた砂地まで転がり、自然と静止する。 「次」  額の汗を手の甲で拭う。汗が目に入り余計にイライラする。 [Phacolepiota aurea 」  3本目はかなりの上部だった。塔の天辺を見上げて外すべき筒を探す。アスタロトはそれを見つけるなり眉をしかめた。  組ませ方が複雑で一部しか露出していない。それ以外はがっちり内部に入り込んでいる。こうなるとかなり魔力を使わないと抜き出せない。  だが嫌がってる暇もなく、アスタロトは天に向かって指をさした。 「kuehn eromyces Pholiota 」  物体移動の魔法を強化してゆっくりその一本を引き抜いていく。周囲の円筒を固定しながら引きずっていくので余計に神経を使った。  やっとの思いで3本目を空に浮かした時、視界に白い紗がかかった。力の使い過ぎで血の気が引いたのだ。  まずい。  倒れまいと足を踏ん張ったが砂は踏みしめにくい。思わずふらついて気が逸れた瞬間、ヒュッと風がうなった。  浮かんでいたはずの円筒が急激に落下している。 「kue hner omyces! K kpl jllohgffu yygyfftkh! 」  叫ぶと同時に円筒が停止した。  ホッとしたが血の気は戻らない。まだ視界は霧がかかったように霞んでいる。しかも動悸に呼応するように眩暈が強くなってきた。足が地についている感覚がない。息を吸って整えようにも、吸えば吸うほど胸苦しくなる。  その時、ドーンッと地鳴りがした。  ついに円筒が落下していた。重量が重量だけに地震なみの振動に襲われる。筒は派手に一、二度バウンドした。一帯に砂煙がたちこめる。  アスタロトは我に帰ったがすでに遅い。砂にむせて咳こんでいるうちに、封印塔の中でまた紫玉が光った。  冗談じゃない。  何が起こるか瞬時に察したが体がいうことをきかない。  アスタロトは逃げることも叶わず地面に膝をついた。明らかに力を使いすぎていた。全身が重怠く、腕一本上がらない。  アスタロトはうすれていく意識の中で、脈打つような紫玉の波動を感じていた。  封印塔の中から光が弾けた。
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