3-11 焦燥

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 アスタロトが倒れ、画面が砂嵐しか映し出さなくなった時は心臓が止まりそうになった。しかもその動かない静止画で一時間以上である。  ショウの焦りは尋常ではなかった。  アスタロトが気付くまで、ショウは死に物狂いで呪文を調べ続けた。かなり遠隔的な魔法になるが、透視魔法で見えている世界に直接働きかける事はできないかと文献を探していたのだ。いくらアスタロトが絶体絶命でも天使の身の上では悲しいかなそれ以外にアプローチしようがない。  いよいよ駄目かと観念した時、アスタロトが目覚めた。ショウは安堵のあまり神に感謝の祈りを捧げた。天使のくせに実はめったに本気で祈らないショウにしては稀なことである。  しかもタルタロスは魔界の空間に切り替わり、さらにアスタロトが巨大化したことで潮目が変わった。  封印の解除は着実にすすんでいる。  だが、当然時間も同じく着実に減っていた。残り二時間を切っている。  アスタロトは休みもせずにひたすら円柱を外している。  確かにアスタロトが巨大化した事で速度は雲泥の差で速まった。すでに円柱は半分以上取り払われ、がっちりした六角柱だった封印塔は三角錐になろうとしていた。  しかし、疲れている。  ショウは前のめりでアスタロトの様子を伺っていた。本数が半分を超える頃から明らかにペースが落ちている。  無理もない。細心の注意を払いながらの作業だし、何より体を巨大化させるのは恐ろしく体力を消耗させるはずだ。  最後まで持つのか。  ショウはやきもきしていた。魔力でも回復魔法でもこの鏡越しに送れるものならいくらでも届けたいが、何度試してもまったく手ごたえがない。 「大魔王様……」  外した円柱が地面に置く前にアスタロトの手から抜け落ちそうになる。慌てて置き直しているが、握力も弱ってきたとしか思えない。  あと少し……頑張って下さい。  ショウは祈るような気持ちで画面を凝視する。
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