1-6 お仕事

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「大魔王って何? 太郎のこと?」 克己はおうむ返しに言った。天使が頷く。 「そう、この方は小悪魔ではなく魔界の四大実力者。軽々しく口をきくような相手ではない。大魔王様が無頓着だからってお前の態度は無礼が過ぎるんですよ。私は常識知らずが許せないタチでね、初めから不愉快でならなかった」 だが、そう言われても克己はピンときていなかった。人間の克己にとっていきなり魔界の階級の話などされてもチンプンカンプンだ。だからこの時点では、克己より身分を隠していた悪魔の方が余程暗い顔をしている。 「昇やめろ。別にわざわざ言う事もないだろう」 「いいえ、克己は身の程をわきまえるべきです。大魔王様に引き換え、克己は凡百な人間に過ぎない。友達ごっこもいい加減になさって下さい」 「友達ごっこって……」 辛辣な言い様に克己は言葉を失った。我慢できずに悪魔は怒鳴った。 「いい加減にしないか!」 「私は礼儀を教えているだけです、大魔王様」 「もういい」 悪魔は無理矢理話を切った。 「克己を家に戻してやってくれ。克己、あそこは結界が張ってあって安全だ。絶対に私が戻るまで、家から出ないでくれ。頼む」  悪魔は地面だけを見て、克己から目を逸らした。克己も喉が詰まって何も言えないでいる。  天使は克己を連れて現れたときと同じくらい唐突に消えた。そして、あっという間に天使だけが帰ってきた。 「私はさしでがましい事をしたとは思いません。何だって四大魔王が茶碗洗いをしたり洗濯物を干したりしてるんです。貴方は大勢の魔物の頂点に立つ存在なんですよ?!」 「手伝いぐらいでガタガタ言うな」 「言いますよ! 私は大魔王様に誠心誠意お仕えして参りました。学生時代からお茶一杯淹れさせる事なく全力でお仕えしてきたのに、何だってあの人間には甘いんですか。今朝なんか克己と一緒に布団まで畳んで! 見ていられない」
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