3-13 タイムリミット

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 体中が蕩けそうに熱い。  消滅っていうのはこんな感じか。アスタロトは途切れそうな意識の中で思った。  何もかもが真っ白だった。  自分が何処にいるのか、天地の上下も不明だった。  アスタロトはそれでも口を開いた。息を吸うと体の中に炎の玉が投げ込まれたように熱い。 「kidu ksilo eji eoooruf vg djwi diiien e kieyscf fo fkorrg Auricu laria auricula-Judae! 」  全ての力を使い切ってアスタロトは叫んだ。  最後の一本、銀の円柱に抱きつく。アスタロトは両腕を絡め、心中するように柱ごと倒れた。 「大魔王様っっ!!」  ショウは思わず立ちあがって叫んでいた。  立ち上がった拍子に机の周りの資料が雪崩を起こす。いつも完璧に整理整頓されている別荘の床はぐちゃぐちゃだった。散らばった魔法書は瞬間移動の専門書や空間魔法の資料で、ここに至るまでにいかにショウがタルタロスまで移動しようと足掻いていたかを物語っている。  とにかく今、画面は真っ白だった。  あまりのまぶしさに、天界の存在であるショウさえ目を細めたほどである。  ショウは顔面蒼白だった。手の震えがとまらない。 「だ……大魔王様……」  ショウは頭をおさえた。  あんなボロボロの状態で、もはや保護魔法も切れかかったアスタロトが助かる訳もない。  よりによってあそこで天界の空間に変化するなんて紫玉もずい分、意地が悪いじゃないか!  やつあたりである。変化に作意はないが、ショウは紫玉を蹴っ飛ばしたい心境だった。  えい、くそ! せめて今からでも、あの場へ行けたら!  ショウは痛切に願った。そして願った途端、瞬間移動した。  あっと思う間もなく、移動魔法が発動していた。あまりに遠距離の移動のため、体がちぎれそうになる。  この感触はまぎれもなく瞬間移動だが、これまでさんざん呪文を唱えても叶わなかったものが何故突然できるようになったのか謎でしかなかった。  あれこれ呪文を唱えたせいで魔法が暴走したのか? 不安になりながらぎゅっと閉じていた目を開けると、そこがさっきまでみていたタルタロスの映像と同じであることにショウは愕然とした。
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