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ショウはしゃがみこんで、恐る恐るアスタロトの頬に手をふれた。
「……つっ」
アスタロトは顔をしかめ、無意識にショウの手をはらいのけようとした。
生きてる。
ショウは声にならないほど安堵して、頬にあてていた手をそのまま首にずらした。アスタロトの細くて白い首はちゃんと脈打っている。
弱弱しいが、ここに来るまでには何度も止まっているという最悪の事態を想定していたのだ。それを思うだけでショウの指は感激で震えた。
「大魔王様、大魔王様」
ショウは、アスタロトの肩を軽く押した。アスタロトは煩そうに眉をしかめたが、すぐに目を開けた。見慣れたアメジスト色の瞳がぼんやりショウを見返している。
「気がつかれましたか、大魔王様。私がわかりますか」
「……馬鹿にするな。砂が、重くて……動けなかったんだ」
アスタロトは、かすれた声でボソッと言った。
「よかった! いつも通りですね大魔王様」
ショウは喜び勇んで答えた。アスタロトは起き上がろうとしてもがいたが、腕一本持ち上がらない。見かねたショウはアスタロトの背中に手をいれ、抱えながら体を起こした。しかし満身創痍のアスタロトは屈んだ姿勢を保つこともできず、ショウの腕の中で低く呻いた。
「あのな、もうちょっと優しくできないのか。怪我してるのは見てわかるだろう」
ショウは、キッとアスタロトを 睨みつけた。
「じゅうぶん丁寧に起こしましたよ。それで痛いならかなりの深手だってことです。全く、なにが紫玉のデータは全て揃ってるですか! こんな有様で、もし私が駆けつけなければ野たれ死するところですよ?!」
アスタロトはショウに支えられているというのに、不敵に笑った。
「お前……来ると思ってたし」
「なっ!」
「だってお前、魔法塔に透視魔法をかけただろう。タルタロスの様子見てて、で、封印が解けて結界さえなくなれば……絶対来るって思ってたよ」
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