3-13 タイムリミット

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 とりあえず生きていると喜んだものの、見れば見る見る程アスタロトのダメージはひどい。ショウの見立てでは内臓だけでなく骨にまで損傷は及んでいるようだ。即刻、天界の光を浴びて腐食した部分を回復させなければならない。 「あなたはこのまま放っておけば確実に消滅します。紫玉を獲っても消えてしまったら何にもなりません。これから全力でお助けしますが、その代わり約束して頂きたい」  ショウは厳しい口調でアスタロトに詰め寄った。アスタロトは煩わしそうに言う。 「俺は瀕死なんだろう、説教は後だ」 「いえ、これだけは約束して頂きます」 「面倒な事を言うな。今回思い知ったが、俺は結構義理堅いんだ。うかつに約束なんかすると責任を感じてしまう。柄にもなく一生懸命頑張ってしまった」 相当苦しいはずなのに、憎まれ口だけは叩けるのが不思議である。ショウは腹立たし気に、アスタロトの腕をぐっとつかんだ。 「頑張って良かったじゃないですか、少しでも気をぬいたら今頃死んでますよ! 私も面倒な事を言うつもりはありません。約束は一つだけです」 ショウは痛いほど真剣だった。 「今後二度と、抜けがけでこんな危ない事はなさらないで下さい。いいですか、するなと言っている訳ではありませんよ。ただ内緒は嫌なんです。  私は普段、天界にいる。だから魔界の事は言ってもらわなければほとんどわからない。今回はたまたま噂を聞きつけたから良かったようなものの、そうでなければあなたは私に何も言わないでタルタロスへ来て、そのまま死んでいたかもしれないじゃないですか。二度とごめんですよ。こんな冷や冷やする思いは沢山です」 きつい口調だが、その分ショウがどれくらい心配したかが伝わってくる。ショウは吐きすてるように続けた。
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