1-7 日没

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1-7 日没

 あれから粛々と封印を進め、気付けば夕方になろうとしていた。  しかし閉じた結界はまだ七か所。余裕のある天使にひきかえ、悪魔はすでに疲れ切っていた。 「大魔王様、やっぱり今日全部は無謀じゃないですか?」 「いや、やり切る」  出だしで言い争いをしたせいか悪魔は意固地だった。  疲労の違いは単純に労働量の差である。天界気流は少なく流出したものも少ない。天使の愛馬、ペガサスのペガ子も天使を見るなり呑気に駆け寄ってきた。他も似たり寄ったりで、声をかけるだけで素直に従う。  一方、魔界気流は動脈が切れたように太く激しく流れ、流出したものは多数で反抗的。思考を持たない低辺層の亡者は力でねじ伏せるしかなく、悪魔が疲れるのも無理なかった。   「封印は体力を使いますから、休憩もなしにあと三つは厳しいですよ。それにしても大魔王様、今回はやたら慎重じゃないですか。いつものえげつない攻撃魔法を使えばイチコロなのに」 「それはできない。まだ克己の件が明確になっていない」 「どういう意味です?」 天使は意表をつかれて思わず聞き返した。悪魔はその問を無視する。 「そもそも今朝感じた瘴気からすると、本当に封印すべき相手は下級霊なんかじゃないはずだ。まだ雑魚しか片付けてないだろう」 「しかし銀を使って結界も修復したし、これ以上他があるとも思えません」 「無論、私の結界は完璧だ。だが、7か所も封印をしたのにこの村を覆っている瘴気はあまり変化していない。おそらく他に……やはりそれが関係してるのか……」  悪魔の声は独り言のように小さくなり、そのまま考え込んだ。    しかし思考に集中した分、隙が出来た。
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