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1-9 魔性
さて、多少時間は前後する。
家の周りの結界が壊れた瞬間、克己は凄い力で土の中にずぶずぶと引きずり込まれた。
まるで底無し沼だった。
今まで確固たる地面だったものが液状化し、体は見る間に沈んでいった。手をばたつかせながら完全に土の中に沈むと、息が続かなくなって頭の中に霧がかかった。
やば……死んじゃうっ……
暗転。気がついた時には薄暗い穴の中で寝かされていた。
「あれ……ここは?」
「気づいたパカか」
……パカ?
おそるおそる体を起こすと、克己は目の前の生き物に釘付けになった。
金色の目、ふわふわの毛皮、長くて太い首、ぷるるっと震える茶色の耳。あまりに全身が毛で膨れていて足が短くみえる四足動物。
答えはすぐに浮かんでいたが、脳が理解を拒否していた。消去法で自分を説得する。
いいか、これはえっと……馬じゃなくて、ラクダでもない。だからつまり、羊でもヤギでもなくて……あれだ。アルパカだ。どうみてもアルパカだ。
正解の異常さに克己は動揺する。しかしアルパカはその動揺を畏れと勘違いしたらしく、ぐっと胸をそらした。
「まあまあ、ワシの威風堂々たる姿に怯える事はないでパカ。ここはあかね山の山奥。お前は誘拐されたんさ。本当は、こういう事はしたくなかったけど、事情があってごめんパカ」
「その話し方、もしかして本物のアルパカだよね!?」
克己は名探偵のように鋭く切りこんだが、本物なら基本的にしゃべらない。言われたパカも呆れて首を横に振った。
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