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「この村はさ……この村はあんまり恵まれた場所になかったから大変だったパカ。雪が降るとすぐに根雪になって溶けないし。そういう時はうんと頑張って地熱を上げて溶かすパカ。夏は夏ですごく暑くなってなあ、村の人たち辛そうだから、葉っぱを揺らして風を通してやるパカよ。
後から後から問題がおきてよ。でもさ、秋には祭りがあるパカ。みんな楽しそうに踊るパカ。賑やかな音が響いてきてさー、はしゃぐ声も聞けるパカ」
パカは幸せそうに嘶いた。
「嬉しかったパカ。そういうの聞くと、嬉しくて疲れも忘れるパカよ」
ぽったん、と一滴、涙が落ちた。
「消されてしまったら、そういうのも聞けなくなるんかいのー。寂しいパカよ。今までずっとずっと大事にしてきたのに、消えてしまったら何もわからんようになってしまうんかいのー。さびしーのー。つまらんの一」
パカの大きな目から後から後から涙が落ちた。克己は思わずパカの前足を握りしめる。
「大丈夫! 任せて。俺さ、太郎に話してみる」
「駄目さー、今さら。ワシ、宣戦布告のつもりで太郎に唾吐いちゃったパカよ」
「ええっヨダレ? 確かにそれは嫌がりそうだな。なんでそんな事したの」
温泉大好きの綺麗好きな悪魔である。さぞダメージは大きかったはずだ。パカはしょんぼりと言い訳した。
「だってアルパカの攻撃方法は唾を飛ばすか噛みつくかが基本なのパカ。神様がこの体をくれた時、アルパカの習性もそのまま身に着いちゃってたパカよ」
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