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「そうか、それで話し言葉もパカ語りなんだ……」
「それはちょっとキャラ付けしてるパカ。実は普通にもしゃべれるけど、自由に動けるアルパカの体をもらったのが嬉しくてパカパカ言ってたら、口癖になっちゃったのパカ」
パカはうなだれた。
「あんなにベトベトにして、きっと太郎は許さないパカよ……」
「や、あの、ゴメンって言えば大丈夫だよ!」
「そんなにちょろくないパカよ……」
気弱になったパカを克己は必死に励まそうとした。すっかり情も移り、パカが消されてしまうなんてとても我慢できなかった。
息をつめて必死に考える。どうにか頼んで……頼む、お願いって……あ!
克己はそこで漸く思い出した。
「俺、三つの願いがあった! パカ安心して。それ使うから絶対大丈夫。何なら今から一緒に話つけに行こ?」
「怖いパカ―!」
「大丈夫だから! ほら!」
本当は悪魔の勢いに怯えていたパカである。克己は逃げようとするパカの背中をよしよしして、説得しようとした。
しかし無用だった。
穴の中に突然光が満ちて、入り口に天馬に乗った二人が到着した。ペガ子から降りた二人は、さっそくパカと克己を見つけて駆け寄ってきた。ここには厳重な結界を幾重にも仕掛けていたのだが、全く無効である。パカはますます恐怖に震えた。
「これが魔性か。どうみてもアルパカだな」
「いい毛皮がとれそうです、大魔王様」
悪魔と天使はひしっと抱き合う克己とパカを見下ろして言った。克己は険しい表情の悪魔に向かって、夢中で訴えた。
「待って太郎! あ、あのね、パカは村を仕切ってる魔性さんでね。そんで、あ、良いパカなんだよっ。すっげー良いやつなんだ。だから太郎、俺のお願い使わせて。あの三つのやつ、あったよね。パカを消さないで!」
「うるさい。経緯は大体把握してる。何が魔性さんだぁ? 馴れ合ってる場合か、お前は誘拐されたんだぞ」
立ちはだかった克己を悪魔はぐいっと押し退けた。
「どけ」
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