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「太郎、駄目!」
「私はこのパカとやらに話がある。ひっこんでろ」
悪魔はまっすぐにパカを見た。その途端、パカは総毛立った。
パカはわかったのである。
吸い込まれそうな悪魔の瞳を見ただけで、自分と悪魔の魔力の差が嫌というほどわかってしまったのである。
悪魔はパカの前でスッとしゃがんだ。
パカは冷汗だらだらである。心臓が口から飛び出しそうだ。だが、悪魔はそんなパカの頭をなでた。びびりまくったパカの短い尾っぽが、倍くらいにふくらんだ。そんなパカに悪魔は、おいお前、と声をかける。
「提案があるんだが、のらないか」
悪魔はパカに視線をあわせて言った。
「私と契約しないか。契約したら、私はこの村を守ろう。嵐がきたり、山火事がおきたらお前一人では大変だろう。呼べばすぐくる。そのかわり、お前は死んだら私の元に来い。話し相手になればそれでいい。どうだ、悪くないだろう」
パカはあんまりびっくりして、息もできないくらいだった。だが、なんとか勇気を奮い立たせて口をひらく。
「ふ、二つ、聞いていいパカ?」
「なんだ」
「あの、あの、ワシは契約とかはよく知らんのだが、なんだか、今言ったのだと条件が良すぎるパカ」
「ああ、それは気にしないでいい。今回の好条件はお前の仕事に対する恩賞のようなものだ。良い村を作ったじゃないか。なかなかいいぞ、ここは。で、二つ目は?」
「あの、ヨ、ヨダレ怒ってないパカ?」
「そんなのとっくに清めた。気にするな」
若干ぎこちなさはあるものの悪魔は微笑んでみせた。
「それに私は克己の願いを叶える約束をしている。悪魔は契約を持ち出されたら、必ず約束を果たさねばならん」
パカの体中の力が抜けて、大きな安堵のため息をもらした。
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