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「やっぱなー、意地悪で言ってた気はしてた」
克己は苦笑いした。
「反省しています。大魔王様は昔、親友を亡くされて以来、友達付き合いというのを避けておられた。それが今回は勝手が違ったので、私も警戒したのです。パカに大事な願いを使うくらいだ、あなたは大魔王様にたかるような人物ではないでしょう」
「しないよ、そんなの。そもそも三つの願いなんか忘れてたし」
天使は克己の無欲さに感嘆のため息を漏らした。
「克己殿はすごいですよ。大魔王様がこんなに打ち解けるなんて異例だし、あなたはあなたで気後れもしない。魔性とも同調してしまう。もしあなたがパカを怒らせ傷など負っていたら大変な事になっていました。大魔王様はあの魔性を気に入ってましたが、あなたに怪我をさせたら話は別です」
「まさか」
「おそらくパカは魔界の最下層に追放、封印は秘術を尽くして最強のものになったでしょう。それとも鬼門にならないように山一つ壊してしまうかな」
「そそ、そんな」
「しますよ、それぐらい大魔王ですから」
あっけらかんとした天使に、克己は恐怖を感じた。
「だから克己殿はすごいんですよ。コミュ力の勝利ですね」
「別にすごくないよ。なんか太郎と話してると昔からの友達みたいなんだ。昇には馴れ馴れしいって怒られそうだけど」
「学友感覚ですか……鈍いんだか凄いんだか」
山壊しちゃうほうがよっぽど凄いし、それを平然と解説しちゃうやつだって相当だよっ。
克己はツッコミたかったが、口に出すのはやめておいた。言ったところでかけ離れた価値観が通じるとは思えない。
「あの」
切り出しにくそうに、天使は克己に言った。
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