2-4 王国

1/2

207人が本棚に入れています
本棚に追加
/345ページ

2-4 王国

 荒廃した景色だった。  ガルガンテ王国は内地をいくつかの領地に区切り、領主が絶大的権限で内政を行っている。国王は対外諸国との外交と、各領主の意見をまとめるために存在し、実務をこなしているのは各地の領主だった。  領主同士は表面的には友好を装っていたが、水面下では絶えず諍っていた。この小さな国の、わずかな土地を広げるために、隙をみては小競り合いが続いていたのである。  王国は一年のほとんどが寒く、家畜は痩せ、民は飢えていた。貧しさは内乱の最大の原因だった。  特に不作の年は食料を巡って必ず血が流れた。そもそも移民によって建国した歴史の浅い国である。新天地を奪い合いながら土地を獲得してきた民族で野心家の気風が強い。    その中でもとりわけこの気質を強く受け継いだ領主がレオン・バンテール伯爵だった。  彼は圧倒的に強かった。  勝つためには容赦せず、敵と認識すれば確実に殺した。  その完全主義は戦いの場に留まらなかった。彼が領主の座について内政を行うようになってから、彼に逆らうもの、彼の基準に達しないものはことごとく処分されている。  いつしか彼の住む城は魔王の住処と言われ、城下の民衆を震え上がらせていた。要塞を思わせる城内は多数の兵士を抱えており、伯爵の手足となるよう日々鍛錬している。  そんな伯爵の性格を反映したように城下の景観も殺伐としていた。点々とした緑の合間に壊れかけた石の家。道を行く人々は陰鬱な表情で、市場ですら活気がない。  民衆は徹底した恐怖政治に抑圧されていた。  彼らも反乱を起こしたことはある。しかし、伯爵に完膚なきまでに叩きのめされてきた。反逆を起こせば、当人だけでなく係累まで皆殺しになる。民は沈黙せざるを得なかった。
/345ページ

最初のコメントを投稿しよう!

207人が本棚に入れています
本棚に追加