2-6 試練

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「私は世の中の決まりごとに興味はない。礼拝なんて無駄だ。だから教会は閉鎖している。ここに滞在する以上、私のやり方に口を出すな。いいな」 「ふ、不必要に殺生を重ねる事こそ、意味がないと思います!」 「腰抜けの分際で偉そうな口をきく」  伯爵は剣先を突きつけたまま、一歩近づいた。  背中に冷や汗が伝っていく。しかし、いつまでもへり下っていてはまともに話も聞いてもらえない。ショウは人間ごときに何を怯むことがある、と自らを叱咤して口を開いた。 「伯爵、それでは私はぜひお側で伯爵のやり方を見せて頂きたく存じます。どうぞお許し下さいませ」 「ならば剣で私に勝て」 「はっ?」 唐突な提案にショウは上ずった声を出した。伯爵は構えを崩さないまま、従者にショウに剣を渡すように指示した。 「貴殿、剣には自信があるのだろう、自身だけでなく友人まで守り切ると豪語したからには。ならば試してみたい。さあ、剣をとれ。勝てば許す」 「そんな乱暴な、」 「これが私のやり方だ。私のやり方を知りたいと言ったのは詭弁か」 「いえ……承知致しました」 成り行き上、ショウはやむを得ず剣を受け取った。  案の上、稽古だというのに刃は潰していない。昨夜の惨劇を思い出してぞっとした。剣は見ためよりずいぶん重く、これをいきなり自在に扱えるとは到底思えない。 「勝負」  だが伯爵はそう言うが早いか攻撃を開始した。一気に心泊数が上がった。ショウは避けるのに精一杯だった。いざ相手になってみると、伯爵の剣さばきは凄まじく速かった。どこから突いてくるのか全くわからない。方々から銀の刃が閃いては火花が散る。
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