2-6 試練

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「どうした、隙だらけだぞ」  伯爵の揶揄う声がショウの焦りに火をつけた。  夕ベの兵士もこんな気持ちだったんだろうか。  ショウは荒い息をしながら考えた。伯爵がひどく大きく見える。朝日に透けた髪が炎のようだ。  そのうち、剣先がサッと皮膚を切るようになった。早くも疲れてきたのだ。  剣は重さを増し、動きが鈍くなる。 「口ほどにもない」  伯爵の言葉には軽蔑と苛立ちが籠っていた。いよいよ剣が肩先をかすめた。そのすぐ隣には首がある。伯爵がその気になればもう切られていた。  だめだ、魔法だ!  減点とか言ってられない、このままじゃコマ切れだ!    ショウは早くも限界を感じて奥の手を使うことにした。  情けないが、まともにやりあって勝てる見込みはゼ口に等しい。かすり傷で済んでいるのは伯爵が加減しているからで、いつ本気になるともしれない。  ショウは伯爵の手元を睨み、口の中で素早く呪文を唱える。 「⋯⋯!?」  突然、伯爵の片腕が上がらなくなった。いつもの効力と比べたら手ごたえが浅いが、一応効果はあったらしい。  防御の基礎魔法がこんなに頼もしく思える日がくるとは!  ショウの感激をよそに、目に見えない何かに手首を押さえられている異常な感覚は、現実主義者の伯爵を呆然とさせた。その隙にショウはようやく伯爵の胸元に刃を突きつけた。  普段、感情を押し殺している兵士達が、こらえ切れずにどよめく。ショウを見る目が一瞬で変わった。 「し、しばらく、お供を、お許し願いたい」  しかし当の本人は息も絶え絶えだった。伯爵は手首をさすりながら忌々しそうに剣を捨てる。 「勝手にしろ」  ショウは頭を下げた。脱力のあまり立っているのがやっとだった。  ズルをしたのは気が引けるが、ともかくこれで伯爵にくっついていられる。しかしそれはさらなる試練の幕開けだった。
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