2-7 夜

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「反逆者は当人だけでなく、関係者を全員処分することにしている。計画者、計画を知っていた者、その近親者」 ショウは聞き過ごせず、思わずスプーンを置いた。 「その人たちをみんな城から追放してしまわれたのですか」 「処分とは始末することだ。ショウ殿」  伯爵はさらりと言った。だとすれば顔ぶれの変わった兵士の数だけ死人が出たということになる。ゾッとした。伯爵の機嫌一つで生死は左右される。それが許されているこの国の感覚がショウには心底わからなかった。 「言っておくが、私は地獄耳だ。噂話しをするならそれなりに覚悟したほうがいい」  食堂はさらに静まり返った。伯爵が食べる音だけが反響する。  伯爵の発言は、客分であるショウよりも城内の使用人を震え上がらせた。伯爵にとって彼らの命の方がより虫ケラに近く、兵士の死は消耗品に等しい。  ショウはやりきれない思いでスープを飲んだ。味付けは悪くなかったが、美味しいとは思えなかった。疲れているのかもしれない。  伯爵は休むという事を知らなかった。  朝から偵察をかねた遠乗り、剣の稽古。書類に目を通して政務を行い、午後は謁見。彼の個人的な鍛練を差し引いても、政治、経済、軍事と重要な三役を一人でこなしている。  伯爵はどんな判断でも自分が関わらなければ気がすまなかった。家臣は彼の指示で動く人形であり、意思を持てば危険人物として処分される。伯爵は間違いなく、恐怖で民衆を押えつけた独裁者だった。  丸一日行動をともにしたショウは、伯爵がいかにこの土地の人々に恐怖を与える存在かを思い知らされていた。伯爵が近づけば体が竦み、伯爵が口を開けば誰もが肯定の返事をする。  異常な緊張感が常に漂っていて、その中にいるだけでもずっしり疲れてしまう。従者とともに、伯爵の命令口調を聞いているとショウまで萎縮してきてしまうのである。
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