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カレンの動画を観たことがあるが、かなりヤバいスポットへも訪れるので幽霊が映り込んでいる。祓い師が祓うような強力な霊も映っているのに、気がつかないのは、ある意味すごい。
戻りたい。この先何がいるのか恐怖しかない。
一人で戻る? カレン無しで上の幽霊たちから逃れて、無事に外へ出ることができるかしら……。
カレンは戻る気なんて、みじんもない。涙が溢れてくる。詰んだ……。
(……階段を下りるの一択しか無い。今日が私の命日になるかもしれない。わーん、私の馬鹿、どうしてこんなに押しに弱いのよ!)
「ステラ、泣いてるの? 私がついてるから心配しないで!」
「ううう……行きたくない……」
カレンに背中をバンバンと叩かれると、少しだけ気が楽になった。しかし依然としてゾクゾクと寒気が走り、鳥肌がおさまらない。
二人で錆びた鉄製の手すりを伝いながら、ゆっくりと幅の狭い古びた階段を進む。天井から漏れた地下水で階段は濡れており、時折滑りそうになりながら、帰りはこれを登るのかとげんなりとした気分になる。
永遠に続くかと思われた階段が終わり、少しだけ開けた場所に出た。
魔石灯の光の先に、ぼんやりと白く丸いものが見えた。
鉱山の砂礫の上に一定間隔を空けて、確かに卵のようなものがある。
「おおー幽霊の卵、本当にあったんだ! ついに、私も心霊体験しちゃったよ、ステラ!」
「うーん、確かに白くて丸いけど、あれは何か人工物のように見えるような」
そして卵からは、ショッキングピンクや青紫等の毒々しい色をしたオーラが放出されている。自然界で毒を持つ動植物が持つ色を放つ卵は、どう考えても、良くないものだ。
「ちょっと拾ってみよう」
「やめた方がいいよ。その卵何だか、色がおかしいよ」
「えー、ただの白い卵だよ。ただの幽霊の卵」
普通の人には白い卵に見えるらしい。
いや、ただの幽霊の卵って何よ……。
怪訝に見つめるステラを気にせず、カレンは興奮している。魔道具で撮影しながら、卵に手を伸ばそうとする。
その時、更に奥の闇の中から間延びした声が聞こえてきた。
「あーれえ? 何でこんな所まで人が? おかしいな」
「「っ!」」
ステラとカレンは、声にならない声をあげた。
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