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「クルス伯爵家の敷地……だったのですね。立ち入り禁止の看板があったのに、勝手に入ってきてしまい、申し訳ございません」
問題ないと言うようにラジエルは、微笑みながら手を上げる。
「それにしてもこの卵が発している色が分かるなんて、君は霊感がかなり強いんだね。でも祓い師としては見たことないな」
「祓い師ではないのです。私は……」
ドクン
突然、鼓動が速まり、嫌な汗が流れる。身体が足下から凍るように、冷えていく。
ステラは、鼓動を抑えるために自分の胸元に手を添える。
自分ではない意識が強制的に頭へ流れ込んでくる。恋情、愛憎、寂しさ、諦め、苦痛が渦巻いている。
そして、その激流のような感情は、全て目の前の全裸男ラジエルへ向かっていた。
「ああ、ラジエルお義兄様、会いたかった」
ステラの口から勝手に言葉が出る。慌てて、両手で自分の口を押さえて、一呼吸する。
「ラジエル様、すみません。私の中に誰かが入ってきました」
「そうか、レディは、憑依体質なのか。珍しいな。まあ、それにしても、厄介な霊を外に出してくれたものだな……」
ラジエルは少し眉をひそめ、ステラの側で割れている卵を見つめる。カレンが慌てて逃げる時に、卵の一つを踏んでいったのだ。
彼の物憂げな表情もまた宗教画の天使の様に神秘的だ。怒張全裸マント姿なのに……。
「これは……一体何なのですか?」
「幽霊の檻という魔道具で、霊を閉じ込めておく祓い師専用の道具だ」
「割れたと言うことは、中身が……出てきてしまったということですね」
「そうだな。そしてそれは君に憑依してしまったようだ。意識を完全に乗っ取られていないのはすごいな」
「慣れていますから……。でもこれは一体誰なのでしょう?」
慣れているとは言え、身体は霊の意識に反応している。死んだ時に残った強い思いが、ステラを侵食していくのが分かる。
ラジエルを抱きしめたい、口付けしたい、その勃起したモノで激しく乱暴に犯して……欲しい。
バージンの自分にとっては、過激過ぎる欲望に眩暈がする。
ああ、でも一人だけ心当たりがある。彼女は、去年事故で亡くなったアステル・クルス様……かもしれない。
「彼女は、私の……亡くなった義妹のアステルだ」
「アステル様……」
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