アリスおばあちゃんの新たな夢(1)

1/1
前へ
/20ページ
次へ

アリスおばあちゃんの新たな夢(1)

 ここはアメリカ。とある州の小高い丘の上に、1軒の家が建っていた。2階建ての真っ白な家。庭もあり、花壇には花も咲いている。この家の主の名は、アリス、年齢は80歳。   今から10年前、アリスおばあちゃんは70歳になったばかり。朝日が昇り、2階建ての真っ白い壁がオレンジ色に染まり。白いカーテンの隙間からこぼれる木漏れ日。  2階で寝ている、アリスおばあちゃんの部屋には小鳥のさえずりが聞こえ。ベッドに潜り込み、顔を出さずにいた。  季節は春なのに、まだ寒いのか。いや、違う。既に起きているが、何か独り言を。 「……そう言えば、今日は女子会だったわね……。2年ぶり、みんな元気にしているかしら!?」  しばらくして、ベッドから起きたアリスおばあちゃん。  現在住んでいるアリスおばあちゃん家の敷地は、家が5軒ほど建つ広さ。幼少時期はこの倍はあった。両親はもうこの世にはいない。  アリスおばあちゃんの父親は科学者で、「人の役に立ってこその科学」、それをモットーに、いろんな研究をして生計を立てていた。ところが、アリスおばあちゃんが生まれる2ヶ月前。ある本屋で1冊の本に出会い。その本のタイトルは、『時間旅行』  父親は、今まで考えもしなかった。話には聞いていた、誰も成し遂げられない夢。不可能だと言われていた、タイムマシン。これを生涯の研究テーマにし。土地を半分売り、自宅の隣の研究所を建て替え。結局、タイムマシンは完成せず生涯を終えた。しかし、その研究をアリスおばあちゃんが引き継いでいる。  父親の夢がいつしかアリスおばあちゃんの夢となり。科学者でもあったアリスおばあちゃんは、必ずタイムマシンを完成させると父親に誓った。しかし、まだ完成には至っていない。  アリスおばあちゃんは父親譲りの才能を持ち、タイムマシンの研究以外にも、いろんな物の基本になる物を研究し。そのアイディアを売り、お金を稼ぎ。自らも開発し、製品なったもの物ある。このことで発想の天才、発明王とも呼ばれ、世界に名を知らしめていた。父親と同じ道を歩いている。最近では、携帯、液晶テレビ、パソコン、人工知能に開発に力を入れていた。  そんな中、病気知らずのアリスおばあちゃんが、食欲がなく、体調を崩しがちになり。 年齢の事を考えるとそろそろ引退を考えたらと、あとは私たちが引き継ぐからと娘夫婦が言う。しかし、引退はまだしたくないアリスおばあちゃん。  アリスおばあちゃんには心強い味方がいる。娘夫婦と孫たち。その孫は、双子の女の子で10歳になる。この夫婦もまた科学者。もしかしたら孫娘まで科学者に。先のことはわからないが、まさに科学者一家。  アリスおばあちゃんのご主人は、5年前に病気で亡くなっている。今も娘夫婦と孫たちと一緒に住んでいる。まるで豪邸を思わせる造りのこの家。部屋数は7部屋あり、1階は3部屋、2階は4部屋となっている。  アリスおばあちゃんの部屋は2階にあり。2階の部屋から見る景色がお気に入り。ただ、娘は今後のことも考えて、1階の部屋に移動してはと言っている。娘夫婦と孫たちも2階の部屋を使っている。  庭には芝生が植えられ、ブランコ、遊具もいくつか置いてある。その近くには花壇もあって、四季折々の花を咲かせ、アリスおばあちゃんが手入れをしている。特にこの庭でお気に入りの花が桜。 日本人から父親が譲り受け、かれこれ20年になる。1本の苗木から育て、大きく成長している。  今、ちょうど見ごろを迎え、アリスおばあちゃんは椅子を準備し。いつものお気に入りの場所で桜を眺めている。この時間は、嫌なことがあってもそんなことを忘れてしまう。この家の隣には、10メートルくらい離れた場所にアリス研究所がある。  アリスおばあちゃんは、カーテンを開け、今日は雲一つない快晴の春日和。机の上の時計を見ると、午前9時。日課の花壇に水を撒くことに。  外に出ると春の匂いがする、またこの時期が来た。花壇には、春を思わせる花が咲き、暖かい優しい風が吹いている。  しばらくして、水撒きも終わり、椅子を準備し。今日はのんびりといつものお気に入りの場所で桜を眺めていた。  本日、この桜を見たいと同級生の友人女性10人が、午前11時に集まる予定。でも、なんで急に集まることになったのか。それに、お昼の準備はしなくてもいいと言っていた。 今日は日曜日、娘夫婦と孫たちは既にお出かけしていない。  すると、友人たちがぞくぞくと現れ。アリスおばあちゃんは、懐中時計を見ると午前10時30分。  おはようと、声をかけ合い。友人たちは手荷物を桜の木の近くにあるベンチに置き。桜の下にブルーシートを引き始め。3段重重箱が3つ中央に並び、定番の紙皿、紙コップ置き、これぞ日本スタイルの花見。アリスおばあちゃんは、初めて見るこの光景にきょとんとしていると、見慣れない人が1人いる。それに気づいたアリスおばあちゃんは、その人が妙に気になり近くまで行き声をかけた。 「あのー、すみません。失礼ですけど、どちら様でしょうか?」  その光景を見ていた他の友人たちは、くすくすと笑い始め。 「私よ、私。わかんない!?」  アリスおばあちゃんは、その声に困惑している。 「もしかして、スザンヌ!? スザンヌなの!?」 「そうよ、びっくりした!? 私、変わったでしょう!?」  親友の顔を忘れていた。では、ない、まるで若返っている。スザンヌは70歳なのに、見た目は40~50歳に見え。よくよく見ると、個人差はあるが他の友人たちも若返っている様子。いったい何が起こったのか。アリスおばあちゃんは、困惑が増すばかり。  そんな、アリスおばあちゃんを置きざりにして、ブルーシートに座った友人たち。この時、靴は脱ぎなさいと言われる、アリスおばあちゃん。しばらく、アリスおばあちゃんを覗いて、桜を眺めていた友人たち。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加