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暫くして目覚めると、外は病室の窓を叩きつけるように雨が降っているようだ。
でも、私にはもう外を見る体力すら残されていない。
病室の扉が開いて、先生が来たのがわかった。
「…先生」
「外は台風がきているようですよ」
そう言う先生の横顔は白い肌と長い睫毛が美しく、魅入ってしまった。
私の顔を覗き込むように見てきて、囁くように言った。
「あぁ、本当に綺麗だ。
最期に命を燃やす様が美しい。
はぁ…。」
先生は興奮したようなギラギラした瞳を、私に向けている。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
私は違和感を感じても、もう身体を動かすことができない。
私から酸素マスクを外すと、先生が激しく喰い尽くすような口付けをしてきた。
もう私には振り解いたり、口付けに答えたり出来ない。
何かを吸い取られていくようだ。
「はぁ、はぁ。
だから、この仕事はやめられないんだ。」
私は口付けをされながら思った。
先生は死神のよう。
気が付いた時には私の意識は深い所で途切れた。
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