口付け

3/10
前へ
/12ページ
次へ
余命宣告をされた日からか、主人は来なくなった。 私は携帯電話で生命保険の担当者を呼び出した。 生命保険の受取人変更の件でと言って。 「死亡保険の受取人を主人から父へ変えてほしいの。無理かしら?」 「無理ではありませんが、よろしいのですか?」 「えぇ、お願いします。 もちろん、主人には内緒で。」 「わかりました。手続きを致します。」 心に決めてからは早かった。 私は余命宣告をされても諦めたくないと思っていたけれど、主人は私の命を諦めたのだ。 ならば、これくらいの復讐は許されるはず。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加