雨恋い

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 天啓だ、今オレの背中に電流が走った。革新的なアイデアではないだろうか。  夕立ち、夕立ちである。昨今の異常気象を鑑みれば、これから来るのはバケツをひっくり返したようなと評されるそれだ。それであってくれ。  どうだろう?OKを貰い、喜びの余り豪雨の中に飛び出してしまうオレはどうだろう?  うんオレ今年で32なんだけど、ホントどうだろうな。  腕白が過ぎるか、ちょっと引かれるかもしれない。  びしゃびしゃに濡れそぼってしまえば、まぁキスなんてイキフンはファーラウェイだろうが嬉ションよりは良いだろう。まぁその際に嬉ションはしている事にはなるのだが。  であればオレの腕白さをどうにか可愛いと捉えて貰うのみ。  返事貰う、雨ザバー、やったーで駆け出す、雨の中振り返ってありがとう、これからシクヨロで笑顔。  んー、どーかなー。素直にトイレの方がマシなような気もするが、決壊しなければキスまであるのだ。  だったらやったろうジャン!プライドをかけたチキンレースってヤツをさあ!?  とにかく降れ!降るならとっとと降れ!降らなきゃフられる!何しろこの歳になってトイレが近くにあるのにも関わらず意図的に漏らすのだ。そんなんオレだったらフるもの。手に負えないもの。  だから降れ!はよ降れ!  こうやって天に向かって全力で祈りを捧げてたら、空から羽と輪っか付けた金髪碧眼でおっぱいがぶりんぶりんなトイレが舞い降りてきて「うっふん、もうしょうがない子ね。少し雨足を早めてあげるワ」って何でだよ普通にトイレ使わしてくれよ頼むよ。  降れ!降れ降れ!フレッフレッオーレッ!フレッフレッオーレッ!  フッ……はぅ……  フレフレフレフレフレフレフレフレフレ…  頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む… 「……ねぇ、さっきから返事してくれないケド…」 「んっ!えっあの、その……いや、返事待ってるのオレなんだけど?」 「んふふ、降ったらにしようかな…」 「あ、あはは…」  しどろもどろになりながら尿意を悟られまいと誤魔化そうとしてるオレに向かって、 「え、まさか緊張してるの?」 手練手管というやつだろうか。目を細めて挑む様に尋ねる彼女は何かちょっとエロい。こんなタイミングでこんな雰囲気を出されたらオレなんてイチコロだろう。こんなん初対面だったとしても好きになっちゃう、普段だったらな。 「あ、じゃあ照れてるとか?もしかして…」  顔は上気して、眉がほんのり寄って、少し切ないような、何ともいえない表情である。  オレはロケーションに拘り過ぎたのだろうか。高々『確認作業』というには、彼女の仕草は少しだけ芝居がかっていて、だけどこんなに追い詰められていなければ、きっとオレもそうだったんだろう。  場酔いというか、告白ハイとでもいうか。 「あ…」  やがてポツポツと、大きな粒がこぼれはじめた。
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