雨恋い

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「降ってきた……けど…」  さあ返事をくれ。こっちのタンクはパンパンだ。雲なんかよりたっぷり水を含んでるんだぜ? 「ん、どうせなら、どしゃ降りがいい」  やはりどうにもこのシチュエーションに酔っているようだ。その横顔は心の底から愛おしいが、いかんせん股間の蓋がもう保たない。  まさか虹の下で、とか言わないよな?オレの下にも虹がかかってしまう。  頼むぜ小猫ちゃんよ、おい。  雨足はどんどん強くなり、ポツリポツリとしていた音も徐々にその間隔を短くする。  降れ、もっと降れ。  この恋は降り頻る雨の中、始まるか終わる。 「こんなに素敵な告白、してくれたんだよって…」  やがて夕立ちは、二人を他から遮断して、その勢いにようやく満足した彼女はこちらを向いた。  燃える様な光を、雨粒達は吸収し、屈折し、あるいは反射する。  半面を朱く染め上げた彼女は、まるでアシュラ男爵のようで、 「今日の事、ずっと自慢するんだ」 「は?」  余りの言葉に一瞬、一瞬なんですよホント、思わず気が抜けて。 「ぁな…」 「あっ雨だーっあああああああ!!!」  スクランブルである、豪雨の中へ飛び出した。  全てをなかった事にしてくれる徳の高い夕立ちは、はしゃげばはしゃぐほどにオレのにょ……恥を洗い流してくれる。  雨だ。  雨だ雨だ雨だ。  流せ、流せ流せ。  涙も尿も、全部、全部。 「雨だあああああ!!」  もう何も分からず喚き散らす。  自慢するんだってよ。  友達にか?どうせ違うだろ。  彼氏にだ。  どうせ『スパイス乙』とか二人してオレをバカにするんだ。  自分の価値に泊つけて、彼氏にずっと自慢して、して……して? 『頭なんか下げてみろ、一生言われるぞ』  ふと、親父の言葉が再び頭を過る。  これはもしかしてアレですかい?アンタに一生言ってやるんだからねっ、的な?  マウント、だったのか。  振り返ってみると、休憩所に彼女の姿はなく、 「………アチャー」 わざとらしく額に手を当て首を振る、 「…………………」 と、オレの真横で、驚愕している彼女と目が合った。 「…………ふん?」 「…………へぇ?」  お互いにお互いの下半身を指差す。  それ以上の確認は要らないだろう、野暮ってもんだ。
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