やけくそクラウド

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やけくそクラウド

 やけになっているーーそう、やけになっているのだ、僕は。トンチンカンな冷笑主義者は黙っていてほしい。生産性が低いなんて、そんな戯言は吐くな。やけの世界においては感情こそがルールの全てなのだ。大地も、空気も、王様だって感情でできている。 誰かが言う。「落ち着け、君はまだこちらの世界にいる。何も急ぐ必要はない。我々はいつもどうりのことをすればいい。君はコンピューターで、僕もコンピューター、単純さ。我々だって、何もしてないわけじゃない。いつも何かはしている。ちゃんと世の中を動かしているんだよ。立派に。君は君の責務を、僕は僕の責務をまっとうする。そしてみんなが幸せになれる。素晴らしことじゃないか。だから、できる限りのことをすればいいんだ。できる限りのことを。そう、できる限りのことでいいんだ」そして言葉が切れる。「できる限りのことで」  僕もそう信じようとした。そのようにする方が自分にとって得であることも十分過ぎるほどに分かっていた。戦略的信仰。一度やけの世界から出ないといけない。そうしないと何も始まらない。線と線を繋げる必要がある。カチッと音が鳴るまで。 ーーNo.1130『やけの世界』をアンインストールします。少々お待ちください。ーー ………… ーーエラーが発生しました。もう一度試してみてください。ーー おかしいぞ。うまくいかない。 ーーNo.1130『やけの世界』をアンインストールします。少々お待ちください。ーー たのむ。 ーーエラーが発生しました。もう一度試してみてください。ーー どういうわけか、うまくいかないみたいだ。 どうしたもんかと悩んでいると、突然、四方八方からサイレンが鳴りだした。 『警告、警告。問題が発生しました。No.1130は、最新のバージョンに対応してません。最新のバージョンに対応してません』 No.1130。僕のことだ。 誰かが言う。「そろそろアップデートした方がいい。ルールが変わったんだ。このまま何もしないと、取り返しのつかないことになるぞ」 「嫌だね」と僕は言った。「もううんざりなんだ。疲れた、もう変化したくない。これ以上、何物にもなりたくない。僕は僕だ。それをいじくられてたまるか」  警告、警告、とサイレンは鳴り続けていた。 「まぁ、君がそういうのなら、そうすればいいさ」と誰かは言った。「どうなっても知らんが」 そして シャットダウン
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