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「こ、こんな庶民の品を皇女殿下へお贈りするなどとんでもないことです! 糸と生地ならすぐにお持ちしますので、いえ、製法をお教えいたしますのでどうか宮廷の信ずる職人へご依頼を下さいませ! 」
「どうして? これとっても素敵だよ。僕はこれが良いと思うよ」
「しかし」
「私も蓮花から君の品を見せてもらった。侍女も職人も問題無いと言っているし、何より立珂たっての希望だ。だよな、立珂」
「うん! だって彩澪さんの作ってるものとっても素敵なんだもの!」
「私の?」
「獣人の抜け毛で記念のぬいぐるみ作ってたでしょう? ああいうね、気持ちを大事にしてくれる人に作って欲しかったの。僕らの羽根も抜けていらなくなるものだけど、大事にしてくれる方が嬉しいから!」
「立珂様……」
「立珂『ちゃん』でいいよ。天藍は偉いけど俺達は地位があるわけじゃない」
「そうだよ! 僕達はお友達だもの!」
立珂ちゃんはぴょんと私に飛びついてぎゅっと抱きしめてくれた。いつもと変わらない笑顔が眩しい。自然と私の手は立珂ちゃんを抱きしめていた。
立珂ちゃんはとても暖かかった。有翼人は保温性の高い羽を背負っているせいで平熱が高いらしい。
でも私が感じているぬくもりはきっとそれだけではない。
「これからもよろしく頼む。糸紡ぎ師としても立珂の友としても」
「はい。微力ながら尽力させて頂きたいと思います」
目の前で殿下が微笑み、腕の中では立珂ちゃんが笑っている。
羽根糸は製糸業界の革命になる。一国の命運を揺らがすほどの。
でも私は――
「もっといっぱい色んな物いっしょに作ろうね!」
立珂ちゃんはきゅっと私の手を握ってくれた。それは来賓なんて高貴な方の手ではない。私の小さな友達の手だ。
「ええ。たくさん作りましょう。立珂ちゃんの望む物は何でも作るわ」
蓮花もこんな気持ちだったんだろうか。
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